2018.09.27

『湖畔の家と里山レストラン 村の灯』障害のある方の日中活動の場づくり「社会福祉法人 静和会」

利用者さんに「ありがとう」を伝えていきたい。

2016年に宿泊施設の羽高「湖畔の家」、里山レストラン「村の灯(むらのあかり)」として開設されたこの施設は、福祉サービス事業所としての役割も担っており、施設内は障害のある方の日中活動の場でもある。そこで働く内海誠二さんに、施設で働くやりがいや、施設で取り組まれている創作活動について話を聞いた。

Uターンのきっかけ

高校生までは府中で過ごして上京。音楽の専門学校に入りました。作曲とかアレンジを勉強していたんですが、自分には才能が無いって思いましたね。卒業してから、東京でガスのバルブメーカーに勤務して。あれはあれで楽しかったです。

 

それから、20代後半になって、自分が何も成しえていないな、節目に何かしようと思い、働きながら趣味で、行政書士の資格を取りしました。その後は、取った資格は役に立っていないですけど。新しいことを取り組むのに、勉強になったし、試行錯誤の場になって楽しかったですね。

 

そして、僕が府中に戻って来たのは、体調を崩したことがきっかけです。リーマンショックの頃で30歳を過ぎてたかな。帰ってきてから仕事を探していても、東京と同じようなガスのバルブメーカーは無く、今までやってきた仕事を活かす所もなかなか見つけられなかったんです。

そんな時たまたま、ハローワークで障害者福祉施設の大日学園の職員募集を見つけ、働いてみようと思ったのがきっかけです。その流れで今は、静和会で働いています。福祉施設で働こうと考えたのは、子どもの頃に、施設に通う叔父がいて。そのこともあって興味がありました。

働くことが楽しい

最初に働いていたのは「大日学園」という施設です。入所施設で、主に知的障害のある方たちと一緒に、内職作業、農作業を行ったり、入浴支援をしたりしていました。この「湖畔の家」の利用者さんは、大日学園から通われている方が多いんです。

 

叔父の影響もあって、どんな仕事かってイメージは想像していた感じでした。利用者さんたちは、新しく入った来た人をフランクに迎えてくれる方が多いので、すぐに打ち解けれた記憶があります。また、職員の方々も仕事の相談に乗ってくれたり、一緒に旅行に行ったりして。割と早く新しい仕事に慣れていったと思います。

何かトラブルがあると「難しいな」と感じたこともあったんですが、まずはどうしたら良いかを自分で考えて提案したり、困ったら先輩たちに相談して助けてもらったりしていましたね。

 

8年位この仕事を続けてきて、辞めようと思ったことは無いですし、やっぱり楽しいです。

やりがい

利用者さん関係で何か問題が起きた時、試行錯誤しながらでも解決できた時は嬉しいです。

 

「よっしゃ!って」。

 

例えば、トイレ掃除。利用者さんによっては、順番通りに掃除ができない方もいます。できなかったとしても、手順をその方に合わせて説明したり、書いたりと工夫します。

例えば、何も無いと落ち着かないという利用者さんがいて、落ち着くのでトイレに籠っていたんです。でも他の利用者さんが使えないということになってしまって。集まる場所にその利用者さん専用にスペースを手作りで設けました。最初はそのスペースには入ってくれなくて、籠っているトイレの入り口にそのスペースを設置し、徐々に慣れてもらっていきました。

考えて試したりして、利用者さんのマイナスの面が、良くなったり、プラスに転じたりということにやりがいを感じます。

施設利用者さんと一緒に働く

湖畔の家は、主に知的障害のある方の日中の生活の場として、利用者さんたちに通ってもらっています。また、障害者施設と併せて、誰でも利用できる里山レストラン「村の灯」と、宿泊施設の運営も行っていて、その運営の業務の一部は、施設に通われている利用者さんと一緒に行います。

宿泊部屋の掃除、レストランで提供される料理の材料となる野菜の栽培をしたり。実際に働いてもらった農作業や、施設外の清掃業務などお給料をお支払いしています。

湖畔の家での創作活動

もともと僕は、絵が好きだったんですが、府中に戻ろうかどうかと考えていた時期に、自分で絵を描き始めたんです。スケッチブックを一冊買って、そこから少しづつ。東京いた頃は、美術館など結構あっちこっちに見に行っていましたね。

僕が絵が好きということもありましたが、湖畔の家で、今のような創作活動を始めたのは、たまたま新しい職員の方で創作活動が得意な方が関係施設に来られ、話が進みました。

気を付けていること

僕は、利用者さんの送迎から、農作業、レストランの接客、色々なことをしている中で、利用者さんとの創作活動に力を入れています。

他の施設の創作活動を見学に行って勉強をして、良いなと思うことは取り入れていっています。利用者さん一人ひとりの思いを大切にしながら、創作活動ができるように。どういう創作が、この人にあっているのかなと。

あくまで本人の想いを大切にしながら、作品の完成も本人任せ。本人が納得するまでとことん。他の施設を見学するまでは、時間が来たり、僕の判断で作品の完成としてみることもあれば、本人任せにしてみたり、と迷いがあったんです。実際に本人の想いを大切にするようになってから、こちらの想像を超えた素晴らしい作品と出会えるようになってきました。

 

「それが、たまらないですね」(笑)

 

すごいのが出てきたなって。そして、そんな作品を人に見てもらいたいと思うようになっていって。

書いている本人たちは、作品作りに没頭していることが大事なことで、人に見てもらうという外に向かった表現ではなくて、自分のために創作をしている方が多いですね。

僕は、利用者さん本人たちが楽しんで創作活動をやってもらえれば良いかなって。職員は、出来上がったものをどう良く見えるようにするかを工夫する役割。どんな額装にするか、こういう展示の方がよく見えるんじゃないかって。その部分も作者のやりたいと思う方法を優先にしています。

 

創作活動が直接関係しているかは分かりませんが、利用者さんの中には、うちの施設に通いだして、落ち着いた方もいらっしゃいます。ご飯をよく食べられるようになった方もいて、そういうのが嬉しいですね。

目標

利用者さんが作っている作品を、いろんな方に見てもらえるようにしたいです。その為に、展示会に出したり、また雑貨屋さんやカフェでの展示もお願いできそうな所を探していっています。

また、利用者さんが描いてくれたイラストをバッグにプリントして販売しているんですが、そういった商品も増やしていきたいと考えていますね。

「ありがとう」と言えるように

利用者さんに、僕から「ありがとう」と言える場面をつくるようにしています。

 

「良い作品ができたね。見せてくれてありがとう」。

 

「これ一緒にしましょうか。助かったよ、ありがとう」。

 

そういう感じで声をかけています。普段外に出かけることが少ない利用者さんたちなので、意識的にそういう場面をつくり、そこで利用者さんたちの笑顔が見れるんですよ。

湖畔の家では、レストラン「村の灯」でシェフが作るランチを食べることができ、羽高湖を望む部屋で宿泊もできる。施設利用者の方が栽培した新鮮な野菜や、綺麗に清掃された宿泊部屋。是非、食事と施設利用者さんたちと一緒に創られている空間を、宿泊して体験してもらいたい。

  • メールまたは電話でお問い合わせください。

    『湖畔の家・里山レストラン 村の灯』
    住所:〒722-0431 広島県府中市諸毛町12944-1
    ランチ営業時間:11:00~14:00
    定休日:火曜日

    宿泊:一泊お一人様 3000円~
    駐車場:有

    HP:http://www.seiwakai-hiroshima.jp/shop/shop02